電磁波過敏症

論考「実験的経絡論」


第三章・経絡の発生学的アプローチ


 

1、新たな発想展開

本論で展開していくものはあくまでも思考実験的仮説であるが、内容自 体は経絡本体の解明に繋がるものと確信している。各章でいくつかの経 絡系の機能的側面を論じていって、全体的には基礎的かつ合理的説明を 目指していくつもりである。

本論の展開は、直接には経絡自体に物質的実体があると仮定した上で、 それは生物学的にみたときに生体内でどのような位置づけになるのかと いう、もっとも基本的な疑問点を追求することから出発したものである。

当初の手順としてはいくつかの検討項目を順次上げていって、そこから 具体的な思考実験の方向性を見定めていこうという心づもりであった。 その結果、現代の生物学や発生学の中にその実体解明の端緒があるので はないかということに気付いたわけである。

ここで、あらためて検討課題を整理し直してみた結果、今回のポイント として次の四点に絞ってみた。

一、経絡は全身隈無く(細胞の一つ一つまで)流注しているとされるが、 その合理的説明をより生物学的レベルで追求する。

二、古典医学的原則として生物ホログラフィックが再認識されているが、 これの発生原理、機序をより科学的に説明する。

三、気血、生命エネルギー、気の波動とは一体何か。それに対する量子 物理学的考察はどこまで可能か検討する。

四、波動レベルのエネルギーに対する検知方法の提示と、それに付随す る実験を試みる。

以上ここに上げた項目は本論の追求する主な課題であるが、従来の経絡 論にまとわりついた研究パラダイムとは大いに次元が異なると思う。当 方としては、既成の概念やそれらのパラダイムの枠に捕らわれない自由 な論及を進めていきたいと考えている。

もとより、現代の最先端科学が追求し、発見した「真理」の寿命はたっ たの十年といわれている。その「真理」のみをもって、数千年の歴史的 時間を耐え抜いた古代中国医学の精華である経絡理論や気血理論を正面 切って解析するには、やはりこれまでのパラダイム思考だけではどうし ても限界がある。その限界を補うのが新たな発想でありアイデアである と思っている。

とにかく現代科学的手法、ないしは手順では評価の対象とはならない領 域に、古典情報そのものは放置されていることには違いはあるまい。ま ずここで気になることは、古代中国において経絡系という先駆的ともい える生物学的、或いは医学的情報が当時の知識人に広く周知されていた 事実である。このことは前章の古典的経絡ホログラフィー理論にも深く 関わってくることである。

古代中国の自然哲学的な概念というものの位置付け、さらには文化的基 準に繋がる分析評価が当然問われてくる。そこには当時も普遍的に存在 し得たであろう何らかの共通の発想パターンというものが、文化人一般 にあったのではないかということなのである。

もっとも、これ自体は古代人の科学的思考という真摯な姿勢そのものを 問うべきかもしれないわけである。そこには当然、多くの情報の収集と 分析というものがいつの時代にもあったであろうし、その結果として科 学的観察眼によって記録されたであろう文献資料も残されているはずで ある。それにまず気付いておく必要があるように思う。

具体的に実例を上げてみると、それは古代戦国時代の学者として知られ る恵施の思想に最も近いものがあるように思う。ただ、いまのところこ の恵施が科学者だったとする専門的評価は聞かない。科学者どころか、 むしろ詭弁家としてのみ知られている人物である。 ここで注目すべき 恵施の思想というのは、当時でさえ異端視されただけに実に奇異で難解 なものである。しかしながら、翻ってそこに現代のミクロとマクロ両面 の物理学的見地を重ねてみると、その発想自体の意外な斬新さが備わっ ているように思えてくるところがある。それを詭弁と捉えるか斬新でダ イナミックな思想と捉えるかは受け取り方次第ということになる。

断片的に残されている彼の考え方をいくつかここで紹介してみよう。( 「荘子」・天下篇」)

  • 「至大にして外は無し。これを大一という。至小にして内は無し。これ を小一という」

(これは究極の大きさ(大宇宙)をまず設定してみせている。同時に極 小の素粒子世界をも想定している。その認識眼をはっきりと宣言してい るようにとれる。)

  • 「厚さ無きものは積むべからざるも、その大きさは千里なり」

(極薄のもののうちにも、相対的な厚さをみる超ミクロの視点があると いうこの発想がとにかくすごい。)

  • 「天と地は卑く、山と沢は平らかなり」

(天地を大きく俯瞰して視るということであろうか。これもマクロ的と いうか観察眼のスケールが大きい。)

  • 「われ天下の中央を知る。燕の北、越の南、これなり」

    (超絶の空間認識というべきか。)

  • 「南方は窮まりなくして、窮まりあり」

    (これはまた際だった地理・方向・距離観の設定であろうか。)

  • 「今日越に適く。しかも昔来る」

(これは目的意識の遂行と、その発生成就した時点での相対的時間を明 確に意識することを示している。このような凝縮した時間の概念を持つ こと自体おもしろい。)

  • 「連環は解くべし」

(どう考えても連環は解けるはずがないものである。そうした絶対的認 識があるからこそ、連環は限りなく解かれるべきものとして存在すると いう、そうしたパラドックス的発想がここにはある。)

このような形で展開する恵施の断片的思想を現代的に解釈すると、結局 あらゆる事象に共通する絶対的な視点を確保しょうとしたもののように 思える。恐らくそれを解き明かそうとする者の視座によって、いかよう にも解釈されるであろう。哲学的解釈もあれば、それこそ量子物理学的 解釈も成り立つはずである。そこに共通することは、日常の相対的な物 の大きさや尺度で森羅万象(現象)を捉えるのではなくて、そこに絶対 的な究極の基準(視座)を持ち込もうとしたということではないだろう か。

つまり、古代中国の戦国時代という特異な時代にあっては、大宇宙(マ クロコスモ)を含めての天地陰陽の気を論じる一方で、小宇宙(ミクロ コスモ)たる人体の陰陽の気を論じ、さらにそれらの交流をも認識のレ ベルに設定し得る共通の法則性を追求する姿勢があったというわけであ る。それが、この恵施の思想にもっとも端的に表れているということに なる。

いやここで、当然のことであるが二千年以上も前にこのようなミクロだ マクロだといった極端に概念的なものが、普遍的にあったとするのはお かしいのではないかという反駁も出てこようと思う。とにかく、古代世 界に宇宙論や時間論が存在したということ自体全くの空論ではないのか ということになろう。しかしながら、文字記録としての古典にこだわれ ば、すでにそれらの記述が厳然と示されている事実も否定できないので ある。

ここに至って、「古を往き今に来る、之れを宙(時間)という。四方の 上下、之を宇(空間)と謂う。」という「淮南子」の記述をみれば、こ れが直接の答えとなるのではないだろうか。広大無辺の空間も悠久の時 間もすべてそこに認知されているわけである。

明らかに現代でも理解される時間の概念があるし、空間認識のはっきり した視座というものが備わっている。まさに、この時代にそうした際だ った英知が輝いていたことだけは、もはや疑いようのない歴史的事実と いうことになる。

我々現代人は、電波望遠鏡や各種の光学電子顕微鏡などがない時代にこ のような発想が出てくることには少なからず驚かされるわけであるが、 これが経絡理論を構築した時代の相対的意味での文化と思想のレベルと いうことになるはずである。

とにもかくにも、恵施の発想自体が時代を超えた異端的な思想の部類に あったとはいえ、それだけ同時代の医学理論や知識人に何らかの影響を 与えたという反証でもあるわけである。当然、古代に成立した医学理論 の考えもこの恵施の基準の内に重なるところがあるであろうし、これに 繋がる経絡論や生物ホログラフィーのダイナミックな展開とその確立に も根底で大いに関連しているのではあるまいか。

2、経絡論と発生学

古代中国のこの経絡説の成立過程を考える上で興味深いことは、インド の地にも類似した古代生理学が存在していたことである。もとより、ヨ ーガは古代インド医学に根ざしているが、その最も古い古典である「リ グ・ヴェーダ」にはプラーナという生命エネルギーの存在が示されてい る。プラーナは中国医学の気に似た存在であり、ナディとよばれる流通 路を通るとされている。しかも、そのナディは全身に七万二千本あって、 その主要なものは十四本あるという。

十四本の気脈、あるいは脈管があるといえば、これは古代中国医学でい う主要な十四経(正経十二本と代表的な奇経二本)と全く同じ構成であ る。さらに興味深いのは七万二千本という生命エネルギーが通る線状の ラインが体内にあるというところである。このように万単位のライン( パイプ状か糸状のもの)があるという生理観は、実はわが国の古神道の なかにも伝えられているのである。

恐らくここらあたりの古代医学情報は、共通の生命エネルギーの認識に よるのではないかと考えられる。こうした古代の生理観がどのような背 景で成立していったか興味深いところであるが、同じ様に体内に機能的 連絡系が存在しているという意味でも注目すべき類似情報ということが できるであろう。

これから論じていく経絡の実体追求は、順序としてやはりミクロの世界 である生物の発生に関わるところから始めなくてはならないものである。 それも、細胞分化以前に遡った、まさに生命発生初期の受精卵から順次 解明していこうと考えている。もはや、そこからでなくては経絡論の展 開は不可能なものとなってしまうという確信がある。それだけに、経絡 系全体は本来的に生物学的実体でなくてはならないわけである。

細胞の増殖は蛋白質の情報伝達物質、細胞増殖因子と細胞接着因子でコ ントロールされていることは、現在の最先端の細胞工学でも指摘されて いる。細胞工学分野ではこれまで細胞単体に探求の目が向けられていた ようであるが、今後は細胞間の仕組みに主眼が移るといわれている。

このことは、中国医学でいう経絡の構造やその生理的機能を多角的に考 える上でも大いに関心の持てる研究課題であって、当然ここで取り上げ る細胞生物学的アプローチの仕方にもそれらを十分考慮していかなくて はならないと考えている。それは古典的医学情報がこうした流れに対し てまったく隔絶した位置にあるのではなくて、意外と原理的なレベルで はぴったり符合するのではないかという予想が立つからである。

たとえば、生命・器官臓器の発生については中国後漢時代の古典「管子 」(水地篇)に記述があるが、当時のこうした記録内容をみたとき、そ れらの古典情報が荒唐無稽な空論とは一方的に決めつけることはできな い。これは同様に専門の古典医学書にもいえることであって、中国医学 の原典である「霊枢・経脈」にははっきりした人体の発生分化について の論理的な記述がある。

その説明によると、人の生命の始めは陰陽の気が交会して精(受精卵) が母体内で出来るところからであり、この精から発育して脳髄が出来る。 さらに分化して骨が出来、経脈も巡るようになって気血が循環するよう になる。さらに筋肉がついて骨格を形作り、皮膚、毛髪を以て覆うよう になるというのである。数千年前の古典には、このような発生学的、あ るいは相対的分子レベルの先駆的捉え方がすでに認識されていたのであ る。

これは現代の発生学からいけば、原腸胚の後期に胚の細胞層が外胚葉、 中胚葉、内胚葉の三つに分化する当たりに比定することができる。つま り、外胚葉からは表皮、脳脊髄の神経系が分化し、中胚葉からは骨格、 筋肉、真皮、腎臓、心臓、血管、結合組織が発生し、内胚葉からは肺気 管支、食道、胃、肝臓、膵臓、膀胱ができるという現代の発生学に重な るわけである。

おおよそこうした中国古典医学書の先端的、独創的記録には評価が集ま らないのが実情であるが、古代文化の総合的認識が欠落した視野の狭い 文献研究が幅を利かしている証拠でもある。医学知識だけではこのよう な古医書は解明できない所以である。

経絡系が生物の発生と密接に関係しているとするなら、本質的には経絡 そのものは受精卵の中にその原型がなくてはならないわけである。当然、 DNA(デオキシリボ核酸)の遺伝子情報にも全身の経絡情報が乗って いるかどうかが問われるところである。遺伝子情報として捕捉できない のであれば、経絡DNAが別に存在するということも考えられるが、こ こはやはりDNAに同時に組み込まれているとみるのが正しいのではな いかと考えたいところである。そして、ここにこそ重大なポイントが隠 されているわけである。

というのは、恐らく経絡系自体は構造蛋白質から構成されていると考え られるからである。生体内の蛋白質はこれらの遺伝子情報によってアミ ノ酸から合成される。それも多数のアミノ酸がペプチド結合よって繋が ったポリペプチド鎖でできている。アミノ酸の種類や数、塩基配列の仕 方で各種の蛋白質がつくられるが、経絡を構成する蛋白質はアミノ酸の 数も多く分子量も相当に大きいのではないかと考えている。(注1)

このように経絡を蛋白質成分という絞り込み方をするのは、あくまでも 経絡は実体としての構造を持っていると確信しているからに他ならない。 そして、この実体構造があるからこそ経絡としての機能的働き、いわゆ る気のエネルギーの流れそのものが生じるものと考えるわけである。

その解明の第一歩として、まず経絡の原型、基本単位というものを細胞 と同じ大きさで捉えていくことが一つの手がかりとなると思う。経絡も ここである種の蛋白質からできているとするなら、細胞成分と全く異質 ということはないはずである。

そして、そうした視野に立てば経絡そのものを構成する主成分は分子量 の大きな繊維性蛋白の一種であると断定できるのではないかと考えられ るわけである。たとえば、ここではケラチンやコラーゲン、フィブロイ ン、フィブリンといった繊維性蛋白質がまずその候補として上げられる。 少なくとも、細胞を構成する同様の蛋白質や脂質分子成分によって、経 絡実体そのものも構成されている可能性は高いのではあるまいか。

真核生物の遺伝子はDNA上にとびとびに存在していて、遺伝子の発現 を調整する領域としての空白部分が多くあることが知られている。たと えばヒトの場合、遺伝子情報が組み込まれている部分はDNAの全体の 五パーセントに過ぎないのである。後の九十五パーセントの部分に、も しかしたら経絡遺伝子が隠れているのではないかというのが当方の希望 的予想なのであるが、経絡に関わる蛋白誘導などの解明は今後の生命科 学研究に期待したいところである。

もしも、この発生段階でまったく経絡の原型が遺伝子情報として存在せ ず、組織の分化がある程度進んだ後に徐々に経絡全体が順次生体内で形 成されるというのであれば、それこそ経絡系全体の形態形成は相当に発 現が遅れることになるであろうし、機能自体も随分と制約されたものに なるはずである。そうなれば、全身に及ぶ複雑系としての広範な連絡系 をつくり、生命体そのものを維持するかたちで構築することはまず不可 能な話ではないだろうか。

原典の記述によれば発生後の気血の流れは早い時期に始まるということ であるから、やはり細胞分化の過程で経絡自体は順次形成されていくと するのが生物学的には順当な考え方であろうかと思う。つまり、細胞の 分化と同時進行の形で経絡も順次分化し、次第に成長していくプロセス が当然存在するということになる。

ただ、経絡が細胞単位でもって網の目のように全身に分布する存在とし て考えていくと、やはりこれは受精卵の細胞分割のレベルから追跡して 行くのが自然である。その上で、実際にそうした考えに合致するような 合理的な生物学的思考実験が成り立ち得るかということになろう。

細胞分裂と同時に経絡が成長分化するとなるとこの場合、細胞の大きさ が約五十マイメークロトルであるから、経絡の最小単位も想像以上に微 細なミクロの世界に設定することになる。もちろん、生体内の主流であ る十二正経も、すべて微細な経絡単位から構成されていると基本的には 考えるわけである。

この全身に及ぶ経絡系を一種の組織器官と捉えれば発生学的な矛盾はな くなるはずであるが、そのような生物学的、解剖学的所見は現段階でも いまだ確認されてはいない。それは、経絡自体が極端に微細な構造をし ているか、あるいは見過ごされるようなありふれた構造体なのかもしれ ないわけである。もちろん、当方からみれば、これはありふれた構造体 であるべき理由もあるわけである。

ただ、経絡というものは発生時の細胞分化と同時にその基本的部分が形 成されていくと考えるのが、生物学的にはもっとも矛盾がないように思 える。まず、それを考察するための非常に簡単(シンプルな)な思考実 験をここで紹介する。

3、思考実験Aについて

ただ、最初に断っておかなくてはならないことは、本論の思考実験はも とより複雑な生化学的内容を追求するのではなくて、あくまでも経絡論 の原理を一つの仮説として解明していくことが目的であるということで ある。 また同時に、すべてにおいてシンプルな形で手順を踏むことを 第一に考えているので、その手法もすべて単純な形で追試、再現が可能 なものを選択していることを十分ご理解いただきたい。

ここでも科学するという姿勢には違いないが、その方向性自体は当方の 主観的な考えだけで設定したものではない。共感できる研究姿勢、考え 方の雛形というものがあるのでここで紹介しておくことにする。

それについては地球物理学者である赤祖父俊一氏が、その著書「オーロ ラ・極地の科学」で強調して書かれているのであるが、「科学をすると いうことは、一般に信じられているように、観測、分析、解析すること だけではないということである。科学においては、観測事実を統合し、 仮説を打ち立て、それを基本的な物理・化学の法則に基づいて定量的に 証明するという作業が必要である。観測し、その結果を分析・解析する のは科学の第一段階で、第二段階として、観測事実の統合による新しい ストーリーを組み立てる、すなわち新しい学問体系を打ち立てることを 忘れてはならない。」ということであった。

このような真摯な姿勢というのは本当に大事なことと考えるわけだが、 本論においては多少の迷走があることも一応前もってお断りしておく。

さて、まずここでは最初に細長い紙テープか長方形の紙片を何枚か用意 する。この紙テープ片の両端を接着して丸いリングを作成する。このリ ングを中央から切り分ければ、当然リングは次々と二分されていくかた ちになる。これがいわゆる細胞分裂の雛形ともいえるパターンである。 (図6参照)

このとき完全にリングを切り放さないように接着部分を残しておく。こ れが、細胞単位でみたときの経絡の分裂現象の基本的原理であると考え ていただきたい。いわゆる生殖細胞以外の体細胞は有糸分裂で増殖し、 次々と細胞のDNAの遺伝子情報は転写されいくことになるのであるが、 経絡の分裂もこれに重複しているものとみるわけである。

ここで注目すべきことは、受精卵の2細胞期が古典に言う生体の陰陽分 裂をも意味していることである。古典でいう生体の陰陽区分もこのよう に生物学的に整理していけば、ここから新しい展開も考えられる。この 当たりの現象は、そのまま古代中国の「周易・繋辞伝上」の考え方にも 当てはまる。

「易に太極あり、これ両儀を生ず。両儀は四象を生じ、四象は八卦を生 ず」とある通りである。ここには陰陽両儀を生み出す根元的実体として の太極(受精卵)があるというわけである。(図7参照)

受精卵が分裂して二細胞期、四細胞期、八細胞期、十六細胞期、さらに 三十二細胞、六十四細胞と分裂を繰り返す。このように桑実胚に至るま での分裂回数は生物によってそれぞれ異なるが、このような分裂発展の 様相は易の陰陽の段階を経ての展開パターンに同調したものであること が分かる。

分子レベルでいえば、前述した蛋白質を構成するアミノ酸の組み合わせ (塩基配列)パターンも易の六十四卦の展開と見事に符合することも注 目すべきであろう。古典情報は荒唐無稽とばかりはいえないのである。

これは単なる現象論としていささかこじつけがましい考え方になるにし ても、これはこれで自然界の諸現象をトータルに表しているように思え る。結局、その概念の意味するところは、陰と陽の二つのエネルギーの 場が次々と生じることを示唆しているものである。要するに、生物の発 生分化の現象も、すべて生命場の展開そのものに集約されるということ ができる。

発生に伴う分裂現象が経絡の成長とどのように関連してくるかという点 であるが、細胞分裂というのはあくまでも分裂であって、決して分離そ のものを意味するものではないということである。細胞と細胞とが完全 に分離独立してしまうということであれば細胞間に何等有機的連絡系は ないことになるが、細胞分裂では細胞どうしは相互に密着しており、生 体膜による有機的なつながりが形成維持されているわけである。

これが、いわゆる細胞接着因子の働く重要な場になるわけである。この 当たりの細胞内外のシグナル伝導や接着、増殖に関与する複雑な生化学 的因子については、最先端医学情報を参照する必要がある。

今回、この過程で経絡の単位というものを最初の取っ掛かりとして考え てみたのであるが、その過程で細胞単位の分裂と経絡単位の成長現象と いうものが同時に進むという仮説を立ててみたわけである。つまり、細 胞分裂は生体膜自体の分裂も伴っているわけであるから、結果的にはそ の中に経絡分裂も当然含まれていくという発想を出したというわけであ る。(図8参照)

この場合も、細胞間は完全に分断されるわけではないので、紙テープの 実験のように経絡単位も分裂と接着とが連続していくものと考えるわけ である。これだと細胞単位で順次経絡成分が確実に組織的に組み込まれ ていく形になる。そして、細胞単位での情報の橋渡しといった細胞間の 伝導システムそのものに、経絡システムも三次元的に展開できることに なると考えたわけである。

それらが細胞の分裂と同調した形で増殖していくことによって、生体膜 に密着した位置に気の環流ルートを確保することができる可能性を検討 してみた。結果的には、縦横に走る長大な経絡連鎖、もしくは編み目状 の連絡系が重層構造で細胞の分化とともに順次誘導されるのではないか と考えたわけである。もし、それが正しければ、全身六十兆に及ぶ細胞 すべてに経絡の機能的連携を確保するということも生物学的には矛盾し なくなるというわけである。

そして、このように経絡環流自体を発生学的に細胞レベルで追跡してい くと、一応こうした細胞間伝導システム同様の様相を備えた経絡密着構 造という最小の単位構造が、形態として経絡系自体にも存在しうるであ ろうという予想が出てきたのである。これが経絡系の最も基本的な原型 の位置にあるということになる。

同時に、これによって始めて経絡は、全細胞を統括しているという古典 の基本的概念である生命場という認識にも繋がってくると考えたわけで ある。

しかしながら、何度も試行錯誤を繰り返すうちにこの思考実験Aの考え 方だけでは経絡の機能的形態に至るまでの発生分化を明確に説明してい くということは難しいということが分かってきたのである。というのは 経絡本体にみられる気のエネルギー発生に至る、機能的形態という最も 重要な部分にどうしても繋がっていかないのである。

要するに、その経絡系の環流を収束する物理的要因や条件についても説 明しなくてはならないはずである。その物理的要因・条件とは、経絡の エネルギー場としての機能的実体を気の流れと共に明確に突き詰めなく てはならないということを意味している。生体はただ三次元的に細胞の 塊で構成されている単純系というのではそうした発想は絶対に導き出し 得ないのである。

当然、現段階では思考実験Aだけでは情報が不足するのは明白である。 そこには、全細胞に及ぶ経絡の統括システムの存在はもとより、それと 同じレベルで気血環流に繋がるかたちでの組織構造自体のさらなる検討 が是非とも必要になってくる。

そこに経絡系(複雑系)に直結した細胞の分化があるのであれば、やは り必然的に構造的形態というものがどのように展開しているかが説明さ れなければならないはずである。その点を踏まえて、次のステップへと 思考実験を進めてみたい。

4、複雑系としての経絡機構

細胞分裂に伴う経絡分裂によってつくられるであろう経絡独自の環流シ ステムの構造的本体が、ここではどうしても確保されなくてはならない。 とにかく経絡分裂による機能的構造を細胞レベルで明確にしておかない ことには、次のステップに進めないのである。

これに関して検討すべき課題として、まず生体構造の基本的モデルがど うしても必要であった。思考実験ということでは、そこにどのような形 態モデルでも置くことは可能であろうが、生体それも人体に絞り込むに は医学情報としての基本的モデルでなくてはならないと考えたわけであ る。

そのような経緯で調べていたところ、幸いにも科学雑誌「ニュートン別 冊・からだのサイエンス」(坂井建雄順天堂大学医学部教授監修)の人 体構造の解説部分に、基本モデルに関連した次のような興味深い記述を 見つけたのである。

「人体は基本的にはちくわのような構造をしている。これは脊椎動物す べてに共通で、約五億七千万年前に登場した先祖から引きついだ特徴で ある。単純なちくわ形の魚に似た祖先から、進化の過程を経て現在のよ うな複雑な構造をとるようになった。」

実はこの「ちくわ形」という基本構造の提示があって、やっと次の局面 へ展開する端緒が出てきたというわけである。

発生学的にみると、やはり経絡構造の基本形もこの単純系の「ちくわ形 」ではないかと考えたわけである。そして、このような現象に伴う構成 成分としてそこに何が誘導され存在するのかを考えたとき、経絡の主成 分は髪の毛のように縦方向に自在に伸びていく、保水性の高い繊維性蛋 白ではないのかということが、ここでも最終的に絞り込まれてきたわけ である。

[図9]に示されるように、生体内の繊維性蛋白(コラーゲン)には通 常螺旋状の右巻きの捻れが形態的に存在する。このように繊維性蛋白と いうのは、柔軟性のある形態と構造とを自在にとることができるという 点をまず確認していただきたい。

つまり、経絡の原型は必然的に柔らかい繊維性蛋白である可能性が高い はずである。綿の繊維のように、そこに水成分を十分に含んでおく必要 があるわけである。しかも、この場合もそのまま受精卵の細胞分裂と分 化とに直接関連してくることが考えられる。

経絡分裂の発現は受精卵の細胞増殖に連動していくことを先に説明した が、細胞分裂が進み次々と転写コピーされていくなかで、細胞間質(基 質)として複雑なスパイラル状の経絡単位がその分化の過程で組み込ま れる可能性があるわけである。これ自体は、原則的には単純な結合組織 の生成ということになるのだが、ここではこの展開を便宜上、思考実験 Bとする。

二細胞期、四細胞期、八細胞期、十六細胞期というように分裂が進んで いくと、それらの細胞どうしの繋がり方が次第に複雑で密なものになっ てくる。そこには、細胞によるリング状のサークルが形成されていはず である。そして、[図10]のようにそれぞれの細胞が輪状に多層構造 をとりながら繋がった状態になるというわけである。

この密着した形態的特徴は、そのまま経絡の機能的構造体としての特質 (物理的な場)が備わったものになると考えられる。つまり、細胞リン グとその間隙を満たす細胞間質リングの多層的ちくわ構造が、経絡の機 能的特質を構成する基本単位(経絡リング)であるというように考えら れるわけである。(図十一参照)

受精卵の分化のパターンについては、思考実験Aのパターンでも実験B でもそれぞれ確定できるわけだが、次の展開としてここからは原腸期以 降の生物学的分化が注目されてくることになる。

そこには、三胚葉に経絡連鎖リングが織り込まれる形で誘導され、分化 していくという発想にもそのまま繋げていくことができる。 つまり、 経絡リングは細胞単位でそれぞれの器官や臓器の組織に組み込まれて始 めて、三陰三陽・十二正経を形成していくということが発生学的に説明 できるはずである。

とにもかくにも、蛋白質の誘導もなくて生体内にいきなり複雑な経絡系 が発生するはずはない。実際の細胞分裂では分化ということで連鎖的に 分裂が連続していくわけであるから、それにびったり重複するかたちで 経絡単位のリングが多層構造をとりながら生体全体に伸びていくはずで ある。

ただ、この経絡分裂の連鎖によるリング形成は単純系ともいえる「ちく わ形」をベースにして並んでいくわけだが、結果的には切れ目のない一 つの複雑な連環をつくっていくことになる。

これは、胚葉分化後も経絡連鎖のリングの回りで、次々とリングが転写 コピーされて細胞増殖と同調した形で増えていく生物学的現象に比定さ れるわけである。(基本は七層構造と推定される)

特に、これらの過程では身体の体表部や手足の末端部分に、最も密な状 態で経絡リングの端末がつくられるはずである。それは皮膚上に、ちょ うど全身が集約投影されるようなかたち、つまりホログラフィック的情 報の伝達があるということであり、気のエネルギー波動の伝わる基本的 構造に基づく、いわゆる光ファイバーに似た機能的伝達路が相似性をも って存在するということになる。体細胞それぞれに遺伝子情報が組み込 まれていることとを考えると、こうした単純系と複雑系の相関関係が凝 縮されていることが分かる。

思考実験Aで示したように、まず全身すべての細胞は単純系の経絡接着 リングに連絡していると考えることが出来る。また同時に生体の基本モ デルを中心に置いて思考実験を進めていくと、細胞レベルで「ちくわ形 」の原型となる固有の経絡連鎖リングが遺伝子さながらに自己相似性を 保ったまま連続的にコピーされていくという、複雑系の介在(フラクタ ル構造やマンデルブロ集合)ということが明らかになってくるわけであ る。

結局、始めには単純系のリング状経絡単位が分化誘導されて成長し、次 第に複雑系としての経絡系(十二正経と八奇経)という特異なシステム が全身に構築されていくことになる。

ここでも、単純系と複雑系とを有機的に繋ぐものの存在がいよいよ問わ れてくることになる。しかもここから、生体エネルギーとして最も効率 的な、そして安定した生命波動が生じているという考えも同時に肯定し ていかなくてはならない。

それが、気のエネルギー環流としていよいよクローズアップされてくる わけであるが、その流れにはまさしく生体情報ともいうべき物理的な固 有の波動(発振・オシレーション)が乗っているという、これもまた新 しい仮説も飛び出してくるわけである。

そして、この経絡連絡系に統合的にどのような生体情報が流れるかが次 に問われるところであるが、結局は身体末端にまで及ぶ生物ホログラフ ィー現象、さらにはフラクタル構造の発現という展開が加わってくる。

数学的フラクタル理論ないしは構造の原型というのは単純系にある。そ の単純系に時間的変化、あるいはパラメーターとしての変数変化が加わ ると、きわめて連鎖的な複雑系に直結する次元が無限大に展開すること になる。 そこには、単純な基本単位が必然的に存在する。もとより複 雑系に成長し得るものには基本的原型が必要なわけである。フラクタル 構造に付随するものすべてがそうである。生物学的には、細胞がその単 位となり得るであろうし、中国医学的には経絡単位(多層リング)がそ れに比定できるというわけである。 ここでもう一つ中国医学的考察を つけ加えると、単純系が時間的経過と共に複雑系に成長していくプロセ スというのは、実は最初から最終段階の複雑系から完全にフィードバッ クされているものではないかという考え方があることである。

それは、折りたたまれたものが順次広げられていく平面的な展開ではな くて、経絡系全体が存在する前に時間的に制御可能な基本原型がどこか にあるというわけである。DNAにみる遺伝子のように、そこに個体の 全情報が設計図として内在している事実同様、全体系そのものが積極的 に最初の基本原型を自在にコントロールしていることになるのではない かと推論されるわけである。

ここで論じた生体の生物ホログラフィーという機能的側面は、経絡単位 のフラクタル構造に伴う一種の波動エネルギーの伝導機構そのものによ って裏打ちされたものではないかというのが現段階の予想ということに なる。 もちろん、生物ホログラフィー現象自体はフラクタル理論とい う幾何学的手法だけでそのすべてが解明できるとは考えられないが、そ こに経絡単位としての「ちくわ形」が制御因子として介在していること を立証していけば、複雑系としての経絡機構の展開がより明確なものに なってくるという予測はここでもやはり出てくる。

このようにみていくと、現代医学でいうところの血管系やリンパ系、神 経系といった全身に及ぶ細胞の分化に伴う蛋白質の誘導システムそのも のに、もっとも早い段階で全体系のシステムとしてこの経絡系が直接関 与しているということにも繋がってくる。

気のエネルギー波動の生成には、本論で提示した「ちくわ形」の特殊な 細胞配列による組織構築の条件が不可欠である。ただ、この部分に関し ては、早々と結論めいたことを述べるまえにいくつかの確認作業を整理 していく必要がある。

(注1)宗教心理学研究所長の山本博氏は経絡の流れは真皮結合組織の 多水層にあるとする説をすでに発表しておられる。(文献「気は挑戦す る」P一四〇)



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発行日 1998年1月16日


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